8月の最終週、百名山の中でも行きにくくて、ここ数年はコロナで小屋も営業していなかったため、本当に「行けない」山になっていた光岳・聖岳へ、ようやく行くことができました。
アップダウンの激しい道を1日8時間以上歩いて4日間かけて縦走する、かなり消耗の激しい登山でしたが、大きくて広い粗削りな南アルプスらしい醍醐味のある山旅でした!
【行程】※このブログは1日目の行程です。
往路:東京→[東海道新幹線]→豊橋→[飯田線]→平岡 ※龍泉閣で前泊
1日目:龍泉閣→[タクシー]→易老渡駐車場(5:30)→易老渡登山口(5:40)→面平(7:10)→馬の背→易老岳(10:30)→三吉平→静高平(12:50/13:10)→イザルガ岳(13:30)→光岳小屋(13:50/15:15)→光岳(15:30)→光石(15:50)→光岳小屋(16:15) ※宿泊
2日目:光岳小屋→光岳→光岳小屋→イザルガ岳→静高平→三吉平→易老岳→喜望峰→仁田岳→茶臼岳→茶臼小屋※宿泊
3日目(前半):茶臼小屋→上河内岳→南岳→岩頭→聖平小屋
3日目(後半):聖平小屋→薊畑→小聖岳→聖岳(前聖岳)→奥聖岳→聖岳→小聖岳→薊畑→聖平小屋 ※宿泊
4日目:聖平小屋→薊畑→西沢渡→便ヶ島・聖光小屋→易老渡→柴沢ゲート→[タクシー]→平岡※龍泉閣で立ち寄り湯
復路:平岡→[飯田線]→豊橋→[東海道新幹線]→東京
【宿泊した山小屋】
光岳小屋:キャパが40人ぐらいだそうですが、現在は14人程度に制限。1泊2食12,000円(ハイシーズン・及び土日は13000円)
【光岳】
百名山、静岡県・長野県、標高2591m。『てかりだけ』と読みます。山頂下の光石が光って見えたからついた名前だとか。南アルプスの南側にあってアプローチも大変。山頂付近にある山小屋『光岳小屋』に泊まるか、茶臼小屋からピストンして目指す人が多いです。
【登山レベル】★★★★☆ 中上級
危険な箇所はないですが、急登と長い行程を歩くので上級寄りの中上級
【山バッチ】
光岳小屋で売っています
易老渡登山口から易老岳へ。5時間の長い登り
前日に東海道新幹線に乗って豊橋、豊橋から18時20分発の飯田線「伊那路3号」で2時間弱かけて平岡へ移動しました。平岡駅では「龍泉閣」という駅の上のホテルに宿泊。この移動だけも相当遠いのですが、翌日は早朝4時にタクシーに迎えにきてもらって平岡駅から1時間半かけて、光岳の登山口となる易老渡に移動します。…南アルプスはなんて遠いんでしょうか。
タクシーで林道を通っている時には雨が降っていましたが、駐車場に着いたときは止んでいて、ほっと一安心。でも、いつ雨が降ってもおかしくないどんよりとした空模様です。
易老渡の駐車場から10分ほど歩くと、登山口に到着。
橋を渡ったら、易老岳までの長い急登が始まります。曇り空、鬱蒼と茂る樹林、6時前の早朝。山を登り始めた最初は辺りは薄暗く、気持ちもくらーくなります。
しかも、早朝にも関わらず、蒸し暑い…。なんだか出だしから気分がアガらないスタートでした。
7時10分。登山開始から1時間半で「面平」という場所に到着しましたが、特にベンチがあるわけでもなく、ただ少し開けた場所があるだけでした。
少し休憩している間に、雨が降り始めたので、イヤイヤながらもレインウエアを着る羽目に。
途中雨がやんだのでレインウエアをリュックにしまっていたら、メンバーの一人のTシャツにヒルがくっついていることに気づきました。まだ血を吸われる前だったので害はなかったのですが、こんなところにもヒルがいるとは…。南アルプスのこのルートはかなりヒルがいるみたいで、他の登山客もヒルにたかられたという話をしていました。おそらくリュックを地面に置いたタイミングで登ってくるようです。
ということで、それ以降は私は地面にリュックをおけず、休憩中もずっとリュックを背負っていました。
標高2000mに着いたのは9時15分頃。登り始めて2時間半です。
今までより空気が涼しくなってきたので、最初よりは少し快適に。
しかも、途中で南アルプスの生体を研究している人にすれ違って聞いたところ、2000mともなるとヒルは生息しない(人間や鹿が運んでこない限りは)ということで、ヒルの心配もなくなります。
それでも、まだ易老渡岳までは1.8kmありますけど…
山頂に近づいたところで、太陽の光が差し込んできました。だいぶ山頂に近づいたって証しだと思って、頑張って登っていきます。
10時半に易老岳山頂に到着しました。
易老岳の山頂は木に覆われていて何も見えません。最初、どこが山頂なのかわからなかったほど。
予想通りしんどかった易老渡から急登5時間。ここで少し休憩して、疲れを癒やします。
易老岳からの激しいアップダウン!静高平の美味しい天然水
さて、易老岳からは光岳へと進んでいきます。
最初は易老岳から下りて行くのですが、これが結構下ろされます。折角登ったのに下りるなんてモッタイナイ!
下りきった辺りで立ち枯れの木の空間に出ましたが、真っ白でその先のどんな景色があるのか、全くわかりませんでした。
鞍部となる三吉平を過ぎると、再び急登が始まります。
岩の壁みたいな、岩が転がる急登が目の前に聳え、ここを登るのかと思うと気持ちが萎えます。
先に登っていた登山客が途中で一休み。彼はテントを背負って歩いているツワモノで、互いに抜きつ抜かれつ、ほぼ一緒のペースで登っていた人です。南アルプスはソロで歩いている方が多く、これだけの急登なのに、テントで登っている人も多かったです。彼に「大変ですよね」と声をかけて、私達は登り続けます。
きつい上りを終えると、その先には天国みたいな柔らかい風景が広がっていました。
霧に包まれた低木と黄緑色の草や、ピンクの花が咲く谷間。そこには小川が流れていて、疲れた登山客を癒やしてくれるような冷たい水が手に入ります。ここが静高平です。
お水をくんでから少し歩くと、一人の男性が下りてきました。「すぐイザルヶ岳ですよ」と教えてくれたので、少しお話タイム。彼は光岳が百名山最後の1座で、先程登頂してきた!ということでした。百名山達成のくす玉を光岳小屋の人が作ってくれたとのこと。ご年配で、手術とかを乗り越えて、ようやく達成した百名山で感動ひとしおのご様子でした。
真っ白なイザルヶ岳
百名山達成の男性が教えてくれたように、静高平から10分ぐらいで、イザルヶ岳への分岐に出ました。
霧で包まれて真っ白でしたので、360℃の大展望が楽しめるはずのイザルヶ岳も何も見えなさそう。でも明日の方がもっと天気が崩れそうだ…ということで、片道10分程度の登山なので、とりあえず登ってみることにしました。
案の定、イザルヶ岳の山頂は真っ白で何も見えず、記念写真だけ撮って、さっさと元の道に戻りました。
ここで、あとから来たメンバー2人と合流。総勢6名で光岳小屋に向けて残り15分の行程を進みます。
おもてなしが温かい光岳小屋
分岐から小屋の方面は木道が敷かれています。ここはセンジガ原と言われる場所で、でこぼこした亀甲状土でできているそう。凍結と融解を繰り返すことで、この地形が生まれるそうです。そのでこぼこ地形を埋め尽くすのが、白い海藻みたいな地衣類の植物(苔の一種なのかな?)。一面、緑と白の野原でした。
光岳小屋が霧の中に見えてきました。
13:50、易老渡を出発してから8時間20分。ようやく本日の宿に到着です!
光岳小屋は今年から若い小屋番さんで営業再開されています(去年も準備されていたようなのですが、結局コロナで営業できなかったとのこと)。
40人ほど泊まれるらしいのですが、コロナで14人に制限しているということでした。今回の営業にあたって、外装もきれいにして、ベッドのマットも色々サンプルを取り寄せながら納得がいくものに変えたそうです。(小屋番の花さんのレポート)
シュラフは持参または1000円で貸し出し。私は荷物を減らすためにレンタルしました。
すごく感じのよい小屋番さんで、着いたら「おもてなしウェルカムドリンク」と「おぶせとドライフルーツ」のお茶うけを振る舞ってくれました。こんなおもてなしをしてくれる小屋は初めて。感動です。テルモスにお茶を入れてるのもすぐ冷めないようにという気遣いを感じます。ちょっと寒くなってきたので、温かいお茶に癒やされました。
光岳山頂と光石。光岳小屋の絶品マッサマンカレー
お茶も頂いて体も温まり、ほどよく疲れも癒えたので、光岳の山頂まで行ってくることにしました。
光岳小屋から光岳山頂へは上りで15分程度、その先の光石へも15分程度で着きます。
周囲は霧の中。やはり展望がなさそうです。
軽いアップダウン繰り返し、最後はちょっと登ると光岳山頂に到着です。
標高2591.5m。易老渡からの長い長い道のりを登ってきて、ようやく南アルプス百名山の最南端、念願の「光岳」に、やっと来ることができました!天気は悪いけど、感動はあります。
山頂は木々に囲まれるので、晴れていてもそれほど展望はなさそう。登頂記念の写真を撮って、光石へと移動します。光石方面に進んですぐ「三角点」があり、そこは展望が開けているようです(今は、何も見えませんが…)。
光岳山頂から10分ぐらい下ると「光石」が見えてきます。石灰石の塊で、太陽の日が当たると光って見えるため、「光岳」という名前の由来になったという説があります。
光石からはピストンで小屋まで戻ります。行きが下りだったので、帰りは上り…地味にきついです。
小屋には、光石から20分ほどで到着しました。今日はこれが本当のゴールです。
もうゆっくりしてもいい!本当に長い1日でした。
17時からお待ちかねの夕ご飯タイム。さすがにお腹が減っています。
出てきたのはマッサンマンカレーと、タンドリーチキン。デザートにはフルーツゼリーです。
マッサンマンカレーは干しエビと砕いたナッツ入っていて、味と食感のアクセントに。ライスはピンクペッパーとフライドガーリックがのっていて、エスニックな味わいのマッサンマンカレーと頂くと、絶妙な香ばしさと刺激があります。タンドリーチキンもしっかり大きくて食べごたえありです。
カレーとご飯はおかわりできます。私はご飯を食べきるためにカレーをおかわり。
小屋番さんが試行錯誤して作ったというこのカレー本当に美味しくて、私が食べた山小屋カレーの中で一番好きなカレーだなと思いました。
ヘリコプターの荷上げは1回しかないということで、ご飯とお肉メインのお料理ですが、「野菜もつけたいなぁ」と小屋番さんが仰っていました。まだまだ色々改善したいという意欲があるみたいです。
明日の朝ご飯はお弁当にしてもらいました。小さいおにぎりが3つ「うめ」「おかか」「とろろ昆布」です。具が書いてあるシール貼ってあって、本当に可愛い。朝ごはんにプラスしてお弁当を頼んだ人は、さらにおにぎりが3つ追加でしたが、「ゆかり」と「梅昆布」など別の具材でした。
18時半ぐらいからカフェ&バータイムです。食堂を立食形式にして、日本酒やワイン、コーヒーなどを販売します。日本酒が3種類、焼酎、梅酒、ワインなどなんでも揃っています。ノンアルコールのコーヒーやジュースなども売っていて、お酒に弱い私は疲れもあったので、ココアを注文しました。一緒に行ったメンバーがお酒好きなので、日本酒を全種類注文し飲み比べ。
発電など倹約しているということで、バーは太陽光発電の明かりのみで薄暗いのですが、それがまたいい雰囲気。大人のバータイムが楽しめます。
すっかり日が暮れてしまったのですが、まだ1人、登山客が着いていないということで、小屋番さんの男性が探しに行かれていました。静高平辺りから電話があって1時間以上かかっているよう。みんなで心配していたのですが、しばらくして、年配の男性が到着しました。朝に、家から車を運転して柴沢ゲートに到着して上り始めたが、思った以上に時間がかかってしまったそうです。
小屋の中は基本的に電気がつかないので、お部屋に戻れば消灯タイムです。
トイレは小屋の外で、水場も外。外で歯磨きを終えたら、部屋に戻り、ふかふかのマットに借りたシュラフを広げて眠りにつきます。