北海道へ遠征する山旅、今回は道東の百名山三座を、3泊4日の旅で巡りました。北海道の大自然と美味しいごはんを楽しむ山旅です。初日は女満別空港から、知床の「木下小屋」に移動し1泊、翌日に羅臼岳に日帰りで挑みます。
【羅臼岳】
羅臼岳:北海道 百名山 標高1660m
登山レベル:★★★★☆(中上級)
知床連峰の最高峰。野生のヒグマが生息する、手つかずの自然が残る北の果ての山です。今回は登山客が多い「岩尾別温泉」から早朝に登るルートでピストンしましたが、標高230mぐらいから1660mまで、1日で1430m位登り下りをし、休憩込みで9時間半ほどの行程になります。日帰りで往復すると高低差も距離も長いので体力が必要です。
【北海道山旅全行程】 ※このブログは①の行程です
往路:羽田空港→女満別空港→[レンタカー]→木下小屋(知床)
行程:
①羅臼岳:木下小屋(4:20)→オホーツク展望(5:00)→弥三吉水(6:00)→極楽平(6:10)→仙人坂(6:30)→銀冷水/携帯トイレブース(7:00)→大沢→羅臼平(8:00)→羅臼岳山頂(9:00)→羅臼平(10:30)→大沢(10:45)→弥三吉水(12:15)→木下小屋(13:30) ※レンタカーにて清里町へ移動
②斜里岳:清岳荘→下二股→(旧道コース)→上二股→馬の背→斜里岳山頂→馬の背→上二股→熊見峠→下二股→清岳荘 ※レンタカーにて阿寒湖温泉に移動
③雌阿寒岳:雌阿寒岳温泉登山口→二合目→五合目→八合目→雌阿寒岳山頂→八合目→五合目→二合目→雌阿寒岳温泉登山口
復路:雌阿寒岳温泉→[レンタカー]→女満別空港→羽田空港
女満別空港からウトロを経て知床の木下小屋へ
初日は女満別空港で友人と待ち合わせ。朝早い便で女満別に着いた私は、4時間ほど空港で時間を潰しました。持ってきた本を全部読み終わり、早めのお昼ごはんで11時には女満別空港にある唯一のレストランで豚丼を頂きました。ちょっと辛めの味付けの豚丼、美味しかったです。
あとで聞いた話だと、女満別空港に立ち食いのお寿司屋さん「スタンディング スシ バー 縁戸」が、ランチタイムだけ営業していて、ここのお寿司も美味しかったそうです。
13時の便でやってきた友人達と合流して、レンタカーで知床半島にある、本日の宿「木下小屋」へと移動します。車で3〜4時間ぐらいの道のりです。途中の車窓から見えるのは北海道らしい麦やジャガイモの広い畑…。
途中、ウトロの道の駅に寄り、本日の夕ご飯のために買い出しをしました。ウニが一折1300円で売られていました!(女満別空港だと2800円ぐらい)お買い得です。さすが北海道。
知床半島に入り、海沿いの道から山の方へと入っていきます。前方に山並みが見えてきました。知床連峰、あの中に目指す羅臼岳があるはずです。
午後5時に岩尾別温泉に到着し、「地の涯」ホテルの横の細い道を通って川横にある「木下小屋」にやってきました。狭すぎて車が停めにくくて困っていると、小屋のご主人が出てきて車を誘導してくれました。
木下小屋は1泊2500円。素泊まりのみで、寝袋もマットもご飯も持ち込みです。露天風呂(シャワーや洗い場はなしで浸かるだけ)があり、宿泊者は無料ですが、立ち寄りの日帰り温泉は300円で利用できます。
お待ちかねの夕ご飯は、山小屋の外のテラスで自炊します。夕ご飯メニューは、道の駅で買った「ウニ」と「ホタテ」と「ししゃも」と「スモークサーモン」、知床牛のキャンプ缶詰です。ウニは生で頂き、ホタテとししゃもは炙って食べます。北海道のローカルコンビニエンスストアで買った、大きな明太子おにぎりとお酒と共に、新鮮魚介類を満喫します。
外のテーブルには、小屋のご主人や他の登山客やYoutuberの男性も一緒で、わいわいと話をしながら、ご飯を頂きました。小屋でのこんな出会いも楽しいですよね。
ただ・・・外には蚊がたくさん飛んでいて、気づいたら足が蚊の跡だらけになっていました(その後1週間以上も跡が残るので、知床の蚊は強烈です…)
北海道の夜は8時頃まで明るく、部屋に戻ったのは8時半ころ。それから露天風呂に浸かります。石鹸が使えないとはいえ、山小屋でお風呂があるのは最高です。3つある露天風呂のうち2つは激アツだったので、一番ぬるい風呂に更に水を足して入りました。自然のままの源泉のお風呂。体がポカポカ温まります。
お風呂に浸かってリラックスし、9時には消灯。明日は朝の4時半には登山を開始します。
木下小屋〜弥三吉水。知床の海を眺める登山。
翌日3時半起床。朝4時には朝ごはんを食べ、身支度を整えます。
羅臼といえば、ヒグマが頻繁に出没する地域。実はここへ来る前、車の中から野生のヒグマを目撃していた私達、念の為に木下小屋で貸し出している「熊撃退スプレー」をレンタルしました(1000円。ちなみになくしたら1万円、スプレーを使ったら使用分だけお金を払う。なので、事前にスプレー缶の重さを量ります)
このスプレーはかなりの劇薬なので、借りる前に使い方や注意点など、小屋のご主人から講習を受けました。
スプレーは、安全装置を外してレバーを押すことで薬物が放射されるのですが、風上に向けてスプレーすると、自分たちのほうに薬物が流れてきてしまうので、なるべく風下にスプレーします。強烈なので熊と2mぐらい離れていても効力はあるそう。
「熊に出会っても、ぎゃーとか叫んで走り出さず、じっと立ち止まって相手の様子を伺う。熊は攻撃前は立ち上がってやってくるので、2mぐらいの距離になったら、風向きを確認しながら、熊の眉間に向かってレバーを押すこと」…とご主人に教えられたのですが、巨大なヒグマと出会って、相手が攻撃を仕掛けてきたときに、そんな冷静でいられるか全く自信がありません。いやぁ、無理だぁ。…もうこれは出会わないことを祈るしかない…。
「ヒグマはまだ人間を襲う習慣がないので、基本的には襲ってこないし、登山道にあまり現れない。ここでずっと小屋を営業しているが、登山者がヒグマに襲われた話はないから大丈夫。茂みや曲がり角で何かいそうだったら手を叩くなど音を出して」と、最後に小屋のご主人がおっしゃって、ほっと一安心。きっとヒグマに会うことはないだろう…。
熊撃退スプレー以外の特記する持ち物といえば「携帯トイレ」。羅臼の登山道にはトイレはなく、トイレブースが1箇所あるだけです、また、残雪に対応するために「軽アイゼン」を持ってきていましたが、今年は7月でも雪は残っていないので、これは車の中に置いていきました。
朝4:20。木下小屋の裏にある「羅臼岳登山口」から、登山を開始します。
北海道の北端だから寒いかと思っていましたが、標高が低いため朝から蒸し暑い…。
最初は樹林帯の中を歩きます。しばらく展望がなく、まだ太陽もあがりきっていないので薄暗い登山道を黙々と登っていきました。登りは急で、朝一番の登山に慣れていない体だと少しシンドい…。
5時近くになって、「オホーツク展望」という場所に出ました。
そこでようやく木の向こうに青い知床の海が見えました!朝日を浴びた爽やかな青の海が広がっています。オホーツク海!まさに展望です。
その後は登っている途中に展望がある場所が何回もあって、海を見るたび元気になりました。
途中の急坂あたりはやたら蟻が多くて、地面を無数の蟻が走り回っていました。どうやらヒグマは蟻を食べるらしいので、ヒグマと遭遇するならこの辺りか?!とヒヤヒヤしながら登りましたが、その姿を見ることはなく無事通過です。(友人は鼻が良いので獣臭がすると言ってましたが、鈍い私は何も匂いませんでした…)
弥三吉峠の上り坂をこえて、少し穏やかな道に出ると周囲の木々が、妙な形に伸びているのが目に付きます。根っこなのか枝なのかひっくり返ったような木や、横にのびていく木など…。知床の冬の環境のせいなのかもしれません。
出発して2時間半、6時に弥三吉水に到着しました。北海道の山の水場はエキノコックスの問題から基本的には煮沸が必要ですが、ここは湧き水だから飲んでも大丈夫という人もいます。持ってきた水はまだあるので、ここではそのまま先に進みます。
極楽平〜羅臼平。可憐な花々でいっぱい!
弥三吉水から先は極楽平という平坦な道に出ます。穏やかな平らの道が続き、文字通り「極楽」な道です。ここで羅臼岳山頂と思しき山が見えてきます。
極楽平は一瞬にして終わり、6時半には「仙人坂」という上り坂に入りました。この坂の途中でも何回かオホーツク海を望むポイントがあります。坂を登りきると、「銀冷水」があって、近くにこのルート唯一のトイレブースがあります。
羅臼岳は花の百名山でもあります。雪が溶けたあとの7月は、たくさんの花で溢れていました。木に咲く花、足元に咲く花。どれも可憐で美しく、写真をたくさん撮ってしまいました。一部をご紹介。
再び上り坂に入ります。大沢という場所なのですが、ここの上り坂がかなり急登でした。岩場をよじ登るような感じで進みます。
急登の大沢ですが、ここはお花の宝庫でした。岩の影や崖の上に白やピンク、黄色の花々が群れるように咲いていて、急坂に一息つくタイミングに花に癒やされ、写真を撮りまくりました。
登っている最中に振り返ると、オホーツク海が見えました。だいぶ登ってきたのがわかります。
長い大沢の急坂を登り終えると、穏やかな道に出ます。すぐにハイマツの林になり、登山道の両側に山が見えてきました。右手が羅臼、左手が縦走路に続く三峰。
朝8時に羅臼平に到着しました。羅臼岳の山頂、盛り上がる岩山が見えますした。ここから山頂まで1時間弱の予定です。
羅臼平はハイマツで囲まれた広い平らな場所で、テント場にもなっています。ここから反対側に降りるルートもありますし、三峰を越えて、オッカバケ岳、知円別岳を越えて硫黄岳の方向へ縦走する道もあります。
知床半島の反対側、根室海峡が見えました。海峡側は一面雲が覆っていて、そこに海があるのかわかりませんでしたが、向こうに見える黒い影は国後島だそうです。
まるで雲の上に浮かぶ島のよう。
テント泊のために、食べ物をヒグマから守るためのフードロッカーがありました。いつかテント泊でここから硫黄岳の方向に縦走したいですが、やっぱりヒグマは怖いなぁ…。
羅臼平〜羅臼岳山頂。最後は岩場の急登
羅臼岳山頂に向けて、再度出発します。ハイマツの緑の山道を歩くのはすごく気持ち良い。
さらに高度があがると羅臼岳の向かいに立つ三峰のその向こうの山も見えてきました。
少し先に雪渓が見えてきました。軽アイゼンも必要なく、雪の上を歩いて渡れそうです。
今回の登山道で唯一残っていた雪渓は、特に問題もなく通過できます。
雪渓を渡ったら、そこに見える岩山の山頂まではもう少しです。
急な坂は岩だらけで、足を大きく上げてよじ登ります。最後の最後でちょっとシンドい登山道ですが、ゆっくりと山頂まで歩いていきます。
午前9時、羅臼岳山頂に到達しました!木下小屋を出発して5時間半。長かった〜。
山頂にたつと、南側に向かって知床半島が北海道の本体から伸びていて、左右に海が見えました。
本当に北海道の北の果てに来たんだと実感。
山頂で登山客とお話をしながら、早いランチタイム。田中陽希に憧れて百名山を回っている青年や、昨日木下小屋でご一緒した人など、登山客といろいろ話しているうちにあっという間に時間がたってしまいました。5時間往復して、この絶景を堪能する時間はたった1時間弱。できるものなら、ここで泊まってのんびりしたい…。
と、思いつつも、北の冷たい風に体が冷えてきてしまったので、下山を開始します。
帰りは向かい側の山々を眺めながら、来た道を下っていきます。
10時半ころに羅臼平に戻ってきました。
ここから先、木下小屋まで長い道のりです。上りで疲れているので、帰りの道のりは非常に長く感じました。天気は午後になるほど快晴になり、山全体は初夏の眩しい光に包まれます。そして標高も下がれば気温も上がり…私達は汗だくで歩き続きます。
13時50分、木下小屋に戻ってきました。
長い行程に足が疲れました。さすがに、足の筋肉がピクピクして、明日は筋肉痛の予感。
心配していたヒグマには遭遇することはなく、無事に未使用で熊撃退スプレーを木下小屋へ返却。何事もなく本当によかった!
羅臼岳登頂記念に、木下小屋で羅臼岳のバッチを購入しました。木下小屋も良い小屋で楽しかったので小屋オリジナルのバッチにしました(小屋のご主人の推しw)
最後に、木下小屋の日帰り温泉で汗を流しさっぱりしてから、明日の斜里岳登山に向け、清里町へ向けて出発します。
知床から清里まで2時間程度のドライブです。途中で、明日登る斜里岳が見えました。
清里町の宿は「緑清荘」という町営のホテル。温泉付き、1人1部屋でしたが、ツーベットルームのお部屋を用意頂きました。ホテルには温泉がついていましたが、夕飯の前に先に、部屋のシャワーを使いました。
本日の夕食はレストランにて豚の鉄板焼、刺身、お吸い物、ごはんなど。羅臼岳で使ったエネルギーをこの御飯で取り戻しました。
夕ご飯後は温泉にのんびりと浸かりました。弱アルカリ性の、ちょっとだけ石油の匂いのする、よく温まる温泉です。木下小屋の夜空を眺める野性味あふれるお風呂も良かったけど、さっぱりとホテルで入るお風呂もいいなぁと思いました。
さて、明日も4時には起きて、早朝に斜里岳へ向かいます。