今年は緊急事態宣言などもあって、雪山登山ができていなかったのですが、宣言も解除になった3月末に木曽駒ヶ岳に行ってきました。行く2週間前に千畳敷カールで雪崩があったので、かなり心配しながらも木曽駒ヶ岳にチャレンジにします。
【木曽駒ヶ岳】
長野県、百名山、中央アルプスの最高峰で標高は2956m。
雪山レベル:★★☆(中級)
ロープウェイで2600mまでのぼれて、往復4時間ぐらいのため登山しやすい山。
今回の雪山は千畳敷カールが凍結ぎみだったので難易度高めに設定しました。
アイゼンとピッケルは必須です!
【全行程】
往路:新宿→[高速バス]→駒ヶ根BT ※駒ヶ根にて宿泊
行程:駒ヶ根駅(8:00)→[路線バス]→しらび平(9:20)→[駒ケ岳ロープウェイ]→千畳敷カール駅(9:30頃)
千畳敷カール駅(10:03)→八丁坂→宝剣山荘(11:15)→中岳(11:30)→頂上山荘(11:40)→木曽駒ヶ岳山頂(11:55)※休憩→頂上山荘(12:55)→中岳(13:10)→宝剣山荘(13:15)→千畳敷駅(14:20)
千畳敷カール駅→[ロープウェイ]→しらび平→駒ヶ根駅 ※駒ヶ根宿泊
復路:駒ヶ根BT→[高速バス]→新宿
駒ヶ根駅からバスでしらび平へ
木曽駒ヶ岳は登山を始めたばかりの頃に、夏のキャンプで駒ヶ根に来たついでに登った山で、今回は2回め。雪の木曽駒ヶ岳は初めての体験です。
…というか、「アルプス」と名前のつく雪山は初めて。
事前にいろいろ調べると、「千畳敷カールは雪崩の巣」とか、「滑落した」とか、結構物騒なことが書いてあるものが多く、行く前ぐらいからドキドキしていました。おまけに2週間前に、ニュースで見た千畳敷の雪崩の写真が頭から離れず夢にまで見ちゃうほど。
新宿から駒ヶ根に行くバスの中で「私ごとき初心者が行っていいものか…」と、かなりビビりな状態で、木曽駒ヶ岳のふもとの町「駒ヶ根」にやってきました。
駒ヶ根のビジネスホテルに宿泊。次の日の朝にバスとロープウェイで千畳敷カールまで上り、そこから木曽駒ヶ岳にアタックします。
翌日は、ここ数週間で一番、天気の良い週末でした。天気予報は「風はあるものの晴れ」ということで、コンディションは良好。駒ヶ根ロープウェイのホームページに上がっていた、千畳敷の「滑落注意」を除けば、アタック日和です。色々不安はあるものの、支度を整えて駒ヶ根駅発8:00のバスに乗り込みました。
…坂が凍結していて断念となれば、さっさと下りて温泉に入ってソースカツ丼を食べよう…と代案を胸に頂きながら、バスはロープウェイに向かって進んでいきます。
途中でバスが寄った「菅の台バスセンター」では人の行列にびっくり。たくさんの人が乗ってきてバスは満席になりました。絶好のコンディションのこの日は、雪山登山をしようとたくさんの人がやってきていました。
しらび平に着きました。
ロープウェイのチケットを買っていると、ロープウェイ待ちの列はどんどん伸びて、1回目のロープウェイに乗ることができませんでした。
予定より少し遅め9時半、2回めのロープウェイで千畳敷駅へ向かいます。
ロープウェイから見た山はすでに雪解けで、川や滝が流れている状態。3月末ではありますが、今年は暖かいため、山もすっかり春の様相です。
標高が上がってきて、ロープウェイから雪で白く染まった山が見えてくるとテンションもアップです。ようやく登る気になってきた!
雪の千畳敷カール。凍結した急斜面。
千畳敷カール駅に着いた後、30分ぐらいかけてゆっくり準備。
スパッツやアイゼンをつけ、帽子をかぶり手袋をして…と、雪山登山の支度します。
駅の外に出ると、太陽の強い光が真っ白な雪の世界を照らし、目を射抜きました。青い空の下、雪に覆われたカールが目の前にそびえています。右側に目を移すと八丁坂と思しき登山道に列をなして昇っていく人の姿が見えました。今日は前日に大雪も降っていないので、雪崩の心配はなさそうです。
千畳敷カールと反対の方角を見ると、ふもとの町の上に霧が立ち込め、その霧の上に南アルプスの雄大な山脈が見えました。
午前10時、木曽駒ヶ岳に向けて出発します。
駅の高台からカールの麓まで一回下りていきます。カールの急斜面を前方に見ながら白い雪原を、アイゼンで歩いていきます。ここまでの雪質はいい感じ。
登山道はすぐに千畳敷カールを登る道になりました。急斜面の雪の壁が目の前に立ちふさがります。歩き始めの最初の上りはきつい。息が切れます。
上り坂はどんどん急になり、斜面の傾きも厳しくなってきました。足を置くところも斜め。足元の雪は凍っていて硬いので、一歩一歩踏みしめないと落ちそうな感じ…これが「滑落注意」ということか…。
上から何人かの人が降りてきます。そのうち一人はずるずると滑り落ちてきて、「え?滑落?」っていう状態に。
途中で止まったのでホッとして「大丈夫ですか?」と聞くと、「チェーンアイゼンなので」と。
うーん…確かにこの急坂だと、チェーンアイゼンでは登れない…というか、よくここまで登ったな〜と、思うくらい。千畳敷カールを登るならば、12本爪のアイゼンとピッケルは必須です。
その先も進めば進むほど、どんどん急斜面になり、さらに登る人の列で渋滞気味。
また一人、滑落なのか、下山なのか、結構な勢いで滑り降りていく人を見て、心が萎えてきました。
下を見るとかなり急…落ちたら止まらないかもなぁ。
しかも足元はかなり凍結していて、一歩一歩しっかりと足を踏み出しても、ちょっと滑りそうになるくらい。踵が浮いちゃうところに足を掛けて登るようなところもありました。
しかも人がたくさんいるので、その頼りない足場で踏ん張って耐え、登るのを待たなくちゃいけない…足のふくらはぎの筋肉がピクピクしました。
…これは下りたほうが安全かな…?
と、下りることも考えたのですが、もう少し行くと斜面がゆるくなるところだったので、とりあえずそこまで行ってから様子を見ることにしました。
少し緩やかになったところで、上を見上げると、あとちょっとで登りきれそう。
足は疲れていましたが、このまま登っていくことにしました。
もう写真を撮る余裕がないので、ひたすら登ることに集中して…。
そして、なんとか…
出発して1時間ぐらいで、千畳敷カールの上、乗越浄土に到着しました。
乗越浄土から中岳へ
乗越浄土でちょっと一休みします…いやぁ、大変だった。
ここを下りるときはどうなるやら不安はありますが、まあ、下りるときはその時考えよう…。今はこの景色を楽しみます!
眼下に広がる千畳敷カール、そびえたつ宝剣岳、そして木曽駒へ向かう途中の中岳。
やっぱり、雪山はきれいだ!
一息ついたら、木曽駒ヶ岳へ向かいます。
天狗荘の横を通って中岳へゆるやかに上っていきます。凍結もしていないし、上りも緩やかなので、千畳敷に比べるて、断然登りやすい。
しかも風が全くといっていいほど無く、穏やかに晴れ渡っています。
中岳は10分ぐらい登ると山頂につきます。
山頂からは、本日の目的地、木曽駒ヶ岳が見えました。中岳を下って、少し登れば山頂。あとちょっとです。
中岳から木曽駒ヶ岳山頂へ
中岳からおりて、駒ケ岳頂上山荘にやってきました。冬期は閉まっているようです。
ここからが木曽駒ヶ岳への最後の上りです。
木曽駒ケ岳は強風と聞いていたのですが風は全くありません。太陽の光が強く、ネックウォーマも外して、薄いフリース1枚にシェルを羽織って上っても暑いぐらいです。
木曽駒岳への上りの道も凍結しているところはなく、雪もいい感じに積もっていたので登りやすかったです。難しいところもあまりなく頂上山荘から15分ぐらい、11時50分に木曽駒ヶ岳の山頂に到着しました。
山頂も風はなく、穏やかな雪の木曽駒ヶ岳でした。
山頂のむき出しの岩に座って、もってきたパンと、お湯で紅茶をいれてランチタイム。
温かいお茶でほっと一息。
下山開始。心配していたカールの下りは…
山頂で1時間ほどゆっくりして、13時に下山を開始しました。
乗越浄土まで歩いて40分ほどで着きます。ここで一休みをして、カールを下る体力を回復させます。
カールの途中でスコップをもっている人がいました。どうやら雪の階段を作ってくれているようです。斜面に足をかける段々がついていて、下りやすくなっています。
すごい、ありがたい。感謝です。
その作って頂いたステップをたどって、慎重に下りていきます。
思ったよりは雪に足が入る!朝と違って太陽が雪を溶かしてくれたため、かなり雪が緩んでいました。登る時より全然、楽です。
雪歩きに慣れている登山客の団体が、滑り降りるようにして、私達を抜かしていきました。見ていると、彼らは尻シェードを始めて雪を滑り台にして下り始めます。
…あれ、下るの楽そう。
もう少し斜面がゆるくなってから、私もチャレンジ。おお、滑る、滑る!楽ちん!
上りはあんなにビクビクしていたのに、下りはこんなに楽しい!
あっという間に千畳敷カールの下に到着。
八丁坂の難所を終えて、千畳敷の雪の平原を歩いてロープウェイの駅まで戻ります。
駅までは少し急な上りがありますので、最後に怪我しないように気をつけて歩きます。
14時20分、千畳敷のロープウェイ駅まで帰ってきました。怪我もなく滑落もなく無事に帰還。天気にも恵まれて、無事に雪の木曽駒ヶ岳に登頂できました。
ロープウェイ駅のカフェで、「キャラメルマキアート」を頼み、南アルプスを眺めならがお茶タイムです。
帰りのロープウェイは、下りる人でかなり密状態でした…。
しらび平からは駒ヶ根の駅へバスで戻ります。夕方になって空には雲が広がり始めていました。明日は雨風がやや強いらしく不穏な天気。今日登れてよかった…。
その日は駒ヶ根で1泊し、駒ヶ根名物のソースカツを頂き、翌日は新宿までバスで帰りました。
初の雪の木曽駒ヶ岳は、千畳敷カールの上りがなかなかハードでしたが、天候も良かったために満足行く登山になりました。
凍結したカールを登っているときは、もう二度と来るかって思いましたが、木曽駒ヶ岳も良かったし、カールも楽しく下りられたので、また来てもいいなーっと性懲りもなく考えております。