朝早くに起きましたが雨が降って、時折風もざっと吹きます。剣山荘の周りは真っ白で視界はゼロ。コンディションの良い日に登る予定がまさかの雨とは…午後から晴れるという予報を信じて、天気の回復を待ちます。
【剱岳】
標高:2999m 富山県 百名山
岩の殿堂とも言われる剱岳。急峻な岩山は山に挑む人を魅了します。今回は別山尾根ルートで、有名な「カニのタテバイ」「カニのヨコバイ」など岩場のコースを通ります。危険な岩場の連続で気が抜けないルートです。体力気力共に必要。
登山レベル:★★★★★(上級 岩場に慣れてからのチャレンジがおススメ)
山バッチ:周囲の山小屋で売っています
【全行程】
往路:東京→[夜行バス]→富山(→[室堂行き直通バス]→室堂
1日目行程:室堂→一ノ越→雄山→大汝山→真砂岳→別山→劔澤小屋→剣山荘※宿泊
2日目行程:剣山荘(8:30)→一服劔(9:00)→前劔(10:15)→前剱の門(10:30)平蔵の頭(11:00)→カニのたてばい(11:18)→剱岳(12:05/12:30)→カニのよこばい(13:00)→平蔵の頭(13:20)→前剱(14:00)→剣山荘(15:30) ※宿泊
3日目行程:剣山荘→劔澤小屋→劔御前小屋→雷鳥沢キャンプ場→雷鳥荘→ミクリガ池温泉(※立ち寄り湯)→室堂
復路:室堂→[バス]→美女平→[ケーブルカー]→立山駅→[富山電鉄]→富山
昨日の晴天が一変。雨の朝…
朝の5時に起きました。予想通り雨。時折強い風が吹きます。
1階の食堂に下りると、宿泊客がみんなテレビの前で天気予報を見ています。関東は台風に襲われて、通勤せずに自宅待機が推奨…そんな月曜日でした。
外は雨で風も強く、剱岳に登るコンディションではありません。
朝ごはんを食べて、食堂のテレビの前でジレジレと、天気の回復を待ちます。
6時になっても雨はやみませんでしたが、7時ぐらいから少し外が明るくなってきました。風も穏やかになり、雨も小ぶりになってきました。
剣山荘の前で空を見上げていたら、男子学生のパーティが剱岳に向かっていきました。ハーネス、カラビナ、ロープをつけて果敢に挑む彼らの姿に、「若いから体力ありそうだなー」と感心しながら見送りました。
8時。外が明るくなりました。雨が止んだようです。
剣山荘の宿泊客の一人。ソロの男性が「よし行こう」といって支度をはじめました。それにつられて私達も登山支度を始めます。
剣山荘の外に出て見ると、少しだけ霧が晴れてきました。
剱岳の方角を眺めている男性に、「これから剱岳に行くんですか?」と尋ねたら、「どうしようかと思っている」とのこと。聞けば、すでに剱岳は2回ほど登っているので、今日行かなくもいいかな…と。まだ一度も登っていない自分は余裕がない状態ですが、のんびり事を構えている彼が羨ましい…。
とはいえ、雨は上がったようです。天気予報も午後は晴れと言っているので、この機会を逃したら今日は剱岳に登れない…そう思って、とりあえず行けるところまで行ってみようと身支度を整えて、私達は出発しました。
宿で知り合った姉妹の女性2人も同じタイミングでの出発となり、私達は女子4人でなんとなくパーティを組んだ格好になりました。
雨の一服剱から前剱へ
スタートして30分ぐらいたったところで、再び雨がふりだしました。
「止むといいなー」と思いながら先を進んでいましたが、雨はどんどん強くなる一方です。
一服劔を登っても周囲は真っ白…。この先進んでもよいものか…悩みながら登山を続けます。
前剱を登る前あたりで、雨はかなり強くなってきました。
だんだん岩場も険しくなってくるし、雨で岩が濡れて滑りやすい…
このまま行っていいのか…
さすがに雨が強かったので、前剱まで行って雨が止まなければ撤退することに決めて、とりあえず前剱の山頂を目指しました。決めてしまえば、それほど怖い岩場ではなく、楽しく岩場を登ることができます。
途中で、剱岳に登ってきたという人とすれ違いました。「雨の中登ったんですか?」ときいたところ、うなずきながら「滑りやすいから、気をつけてね」と言われました。ですよね…滑りますよね。雨だもの。
その後も女性のソロ登山客も山頂から下りてきました。「雨でも行ったんですか?」と聞いたら、「レインウエアびしょびしょになっちゃって着替えました〜」と軽くお答えになるツワモノ女子。
この雨の中でも、果敢にチャレンジして無事に下りてきている人が何人かいるのに勇気づけられて、とりあえず前剱まで登ります。
10時過ぎに前剱の山頂に到着しました。
ここで雨が降っていたら登山中止と思っていましたが…なんと、奇跡的に雨が上がりました!
周囲は真っ白ですが、雨がふっていないだけでも元気がでます。
覚悟決めて、剱岳に挑むことにしました。
前剱の門、平蔵の頭・カニのタテバイ
10時半、前剱を下りてきて、前剱の門に到着しました。剱岳のルートを予習していたときに、ここって怖いんじゃないかなと思っていた場所…。
白い霧の中、鉄の橋が見えて、岩山に横に鎖が連なっているのがぼんやり見えました。鎖の下は深い岩の壁…まあ、霧で足元がどれだけ下に落ちているかはわかりにくいですが…。
まず梯子を渡ります。次に雨で濡れてすべりやすい鎖を握って、岩の間に足を置いて横に移動していきます。思っていたより足場がちゃんとあったので、落ち着いて歩いていけば大丈夫です。
足元を覗き込むと、やっぱり高いな〜とちょっとビビる。霧が晴れていたら高度感はもっとあったことでしょう。
11時に次の難所、「平蔵の頭」にやってきました。
垂直の岩に鉄杭がうちこまれていて、鎖が垂れ下がっています。
うーん…これを登るのかな…どうやって…?
とりあえず杭に手をかけ、足をかけ、体をお仕上げてみます。途中、鎖に手をかけバランスとり、鉄杭に足を置きながら垂直の壁をよじ登っていきます。なかなかドキドキする岩場上りです。
平蔵のコルを越えて、白い霧の中を歩いていくと、チャラーン、チャラーンと鎖の音が響いてきました。
もしかして、そろそろ、あれですか…
霧の向こうに、立ちはだかる高い岩壁。「カニのタテバイ」って書いてある。
おおー。思っていた以上に高い。そして岩場にさっきまで降ってた雨が染み込んでツルツルしている…。
立ちすくんでいても仕方ないので、岩場にとりつきます。左側の鉄杭に足をかけて、鎖をにぎります。次は岩に足をかけて、体をぐいっと持ち上げます。
雨で濡れている鎖は、握っていても滑りやすい。足をかけるところが思ったより小さかったり、高かったり、しかもこちらも雨で滑りやすく、途中三点支持ができず、腕の力だけで体を押し上げたりして、何度かヒヤッとする場面が出てきました。それでも雨上がりの真っ白な世界が幸いしたのか、高さによる恐怖感はなく、なんとかカニのタテバイを攻略。無事に岩の上に立つことができました。
カニのタテバイを登って、ほっと一息ついたのもつかの間、また岩壁と鎖が現れます。
タテバイでうまく足がかけられない時があったので、念の為簡易ハーネスをとりつけ、先に進みます。
今度の岩場も足をかける部分にうまく足がかからず、体全体でよじ登る状態でした。タテバイよりも高度感はないのですが、岩場の登りにくさはタテバイ以上のところありました。
最後の上りを登って、尾根道らしき場所に到着しました。
少し歩くと早月尾根との合流点が見えます。山頂までにあと少しです!
剱岳登頂!下山のカニのヨコバイ
12時少し過ぎて、ようやく山頂のに到着しました。片道3時間半の道のりでした。岩でできた神社が白い霧の中にひっそりと佇んでいます。
天候が悪かったために山頂は私達以外の人はおらず、まさかの独り占め状態。
360度の展望はまったく望めませんでしたが、難所を乗り越えて、憧れの剱岳山頂に立てただけでも感動です。
剱岳山頂で、軽くごはんを食べました。風はまったくなく穏やかな山頂。前剱を最後に、雨もふられることがなく、本当にラッキー。
12時半に下山を開始します。
山頂から30分もしないうちにカニのヨコバイにやってきました。鎖に沿って岩場を下っていきます。
ヨコバイの道標のところを下りると、いきなり足元が消失します。岩が切れ落ちていて進めない…
先に下りていた姉妹が「右足を崖の下の赤く印がついた岩の上にのせて!」と教えてくれました。下を覗き込むと赤く印のついた岩が出ています。そこに足をのせてから体を横移動させると、つるるつの岩肌に、足を置ける段と鎖が並行連なったヨコバイに入りこむことができます。
もちろん崖の下は底なしの谷。でも霧のために高度感はなく、怖さはあまり感じませんでした。ただ「これが噂のカニのヨコバイだ」と思うとちょっとドキドキ。
他に登山する人もいないので、折角つけた簡易ハーネスのカラビナを鎖にかけて安全確保しながら進んでみました。とはいえ、杭があるところでカラビナを掛け替えている手間に時間がかかり、逆に怖かったかも…さっさと行ってしまったほうが良かった?
平蔵の頭、前剱、一服剱を通って下山
ヨコバイが終わると鎖場の連続です。疲れてきているので慎重に進みます。
平蔵の頭に戻ってきました。上りと下りでルートは異なるのですが、急な岩山を上り、また下ります。
前劔の門。行きは切り落ちた崖の水平移動が緊張する場所でしたが、帰りは岩場の登りと下りです。
前剱から一服劔へ最後の道のりです。少し霧が晴れてきたので、ようやく白ではない劔からの景色を見ることができました。
やっぱり景色があるとテンションがあがります。帰り道は楽しく歩くことができました。
一服剱を越えて、剣山荘が見えました。ゴールが近づいてきます。疲れた足で慎重に下山。
剣山荘に無事に帰ってきました!雨でどうなることかと思ったけど、なんとか剱岳の山頂に登って戻ってくることができました。
やっぱり山頂に行けると達成感ありますね。
今度は景色が良い中、剱岳にチャレンジしてみたいと思いました。