百名山のひとつ「皇海山」に登るには、距離が短い不動沢ルートが利用されていましが、2019年の台風で栗原川林道が崩落して廃道になってしまい、この登山ルートは閉鎖。今は距離の長い、栃木県側の庚申山登山口から鋸山経由で登る「クラシックルート」しかなくなってしまいました。岩場や鎖場が多いロングコースなので、逆にこのルートの方が楽しいかもしれないと期待を胸に、今回はツアーを利用して、避難小屋泊2泊3日で皇海山に行ってきました。
【皇海山】
百名山、栃木県・群馬県、標高は2144m。北関東の秘境。栃木の庚申山登山口から登るルートは深田久弥も登った道で「クラシックルート」と呼ばれます。途中の道は急勾配で崩れやすく、油断すると岩や石が落ちる危険が多い道です。急な岩場の上り下りもあり距離も長いので、慎重に進むことをおすすめします。ちなみに庚申山荘を出発した後はトイレはありません。
登山レベル:★★★★★ (上級) 距離が長いのと岩場の三点支持が必要。
行動時間:10時間
【山バッチ】
庚申山登山口のかじか山荘に売っています。
【行程】
1日目:庚申山登山口(12:30)→庚申山荘(15:30) ※宿泊
2日目:庚申山荘(5:00)→庚申山(6:30)→駒掛山(7:20)→渓雪山(7:30)→薬師岳(8:00)→鋸山(10:50)→皇海山(12:30)→鋸山(14:30)→女山(15:30)→六林班峠→庚申山荘 ※宿泊
3日目:庚申山荘→庚申山登山
庚申山登山口から庚申山荘へ
東京からミニバスで庚申山へ到着しました。
まずは庚申山登山口にある国民宿舎かじか荘。ここでお昼ごはんを食べて、身支度を整えます。
今回は避難小屋泊なので、燃料や食料は自分たちで持っていきます。小屋には布団があるのですが、私はシュラフは持っていきました。
庚申山荘までは林道を歩きます。
川沿いの整備された、ゆるい上り坂を1時間ほど歩くと、登山道になります。
1時間ほど歩くと森の中に赤い鳥居が出てきます。この鳥居をくぐって庚申山、その向こうの皇海山へ登山が始まります。
庚申山は「南総里見八犬伝」も出てくる山だそうで、古くは日光修験道の修行地だったとのこと。「関東ふれあいの道(関東一都六県を一周する長距離自然歩道の名称)」の山の1つにも数えられています。
道は林道から外れて登山道となり、山の中を登っていきます。
途中には道の説明する看板がたくさんありました。
「鏡岩(父親が猿に嫁に行った娘と涙の別れをした場所)」や、「猿田彦神社跡」など、歴史と謂れのある道なんですね。
皇海山がなければここに来ることがなかったので知らない場所でしたが、関東ふれあいの道の山々にも興味が出てきました。
山道に入って2時間ほど歩くと、庚申山荘という避難小屋に到着します。
避難小屋ですが、時々管理人さんがやってきます。利用料金は2080円。
2階建てで、1階は2間+食堂、2階は吹き抜けの一間でどこでも寝れるようになっています。
かなり広いので40〜50人ぐらいは泊まれるかもしれません
トイレは外にあるのですが、私達が行ったときは撹拌機が壊れていました。
夜は電気がないので、ヘッドランプをつけて、みんなで持ち寄ったガスを使ってピザを食べました。夜は布団とシュラフで寒さに備えましたが、標高が低いためか10月でも寒くはありませんでした。
庚申山荘から庚申山へ
次の日は、朝5時に庚申山荘を出発して、皇海山を目指します。
10月の朝5時はまだ暗いのでヘッドランプをつけて歩きます。歩いて30分もすると東の空が白白と明るくなってきました。そろそろ日の出です。
庚申山荘から庚申山までの道のりは、最初はふつうの登山道なのですが、そのうち梯子が出てきます。登山道の脇には切り立った岩の壁が多く、庚申山までは急峻な岩の間を縫って登っていくことになります。
朝6時頃。太陽が上がってきて、山が朝日で赤く染まりました。
一気に明るくなって視界が広がり、歩きやすくなります。
6時半に庚申山の山頂に到着しました。ここから周囲の山々がよく見えます。目指す皇海山の姿もよく見えました。深田久弥が「その横がつまって、颯爽と峰頭をもたげ、一気に下の沢まで落ちている姿は、思わず脱帽したいほどの気品をそなえていた」と表現した美しいラインの山です。この皇海山の姿を見たら、百名山に数えられるのも納得です。
庚申山から鋸山へ
庚申山から皇海山へはいくつもの山のピークを越えます。駒掛山、渓雪山、薬師岳、鋸山などを越えないと目指す皇海山に到着できない。このルートは長いのです。
7時20分、出発から2時間ちょっとで駒掛山に到着。山頂は木に覆われているので、見晴らしはあまりありませんが、山頂の標が木にかかっていました。
山のピークからまた次の山へと進んでいきます。
8時に薬師岳に到着しました。次の山は「鋸山」。ギザギザの歯のような稜線がある山は、よくノコギリと言われるのですが、ここの鋸山も同様。ギザギザの急峻な稜線に登っていきます。
鋸山の手前で「白山」というピークに出ました。ここからは皇海山がキレイに見えます。庚申山から見たときよりはずっと大きく、目標の山に近づいてきたことがわかります。
白山のピークから降りるところは、ほぼ垂直の崖で、鎖を掴みながら下りていきます。
ツアーだったのでロープで安全確保してもらいましたが、鎖を掴んで慎重に降りれば無事にクリアできる場所です。高度感はあるのと、足元が途中でなくなるので、少し怖い思いをするかもしれません。
この山の斜面、岩がぼろぼろで足元が崩れやすく、一部の岩にしがみつくと、その岩ごと剥がれる危険性があります。登山中も落石の危険があったので、ここを通るときは要注意です。
でも、この山から見える北関東の山並みは絶景です。
景色を楽しみながら、険しい急斜面を登っております。
10時50分に鋸山の山頂に到着しました。
ツアーで大人数の登山ということもあり、出発から5時間半以上かかりましたが、個人で行く場合は庚申山荘からは4時間程度で着く予定です。
鋸山の真正面が皇海山。ここから急な坂を下りてから、皇海山への最後の上りになります。